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ドライ潤滑コーティング 初期馴染み二硫化モリブデンコーティング

初期馴染み二硫化モリブデンコーティングとは、二硫化モリブデンMoS2・グラファイト等、固体潤滑剤を高濃度に含んだコーティング皮膜です。高過重下の潤滑性、耐焼き付き性、初期馴染みに効果を発揮し、早期に良好な当たり面を形成し、理想的な摺動面を作り出します。オイル、グリス等の油脂類だけではクリアできない初期摩耗領域を安定させることで部品の長寿命化に繋がります。常温から比較的低温でコーティング可能です。一般に二硫化モリブデンコーティングと呼ばれており自動車部品、精密機器の長寿命化に貢献しています。また二硫化モリブデンコーティング初期馴染み性だけでなく樹脂バインダーを選定する事により耐久性に優れた摺動材としても活用されています。

初期馴染み二硫化モリブデンコーティングを行う主な目的は内装部品の異音防止、ステンレス部品、ネジ、ボルト、ナットの焼き付き、カジリ防止コーティング、軸受けへの潤滑補助等があります。

コーティング皮膜製品紹介

品名 固体潤滑剤 鉛筆硬度 動摩擦係数μ 静摩擦係数μ 耐熱温度[℃] 特徴
MD1610 二硫化モリブデン
グラファイト
B 0.20 0.31 約200 初期馴染み性、焼き防止性に優れる。
MD1631 二硫化モリブデン H 0.18 0.27 約200 焼き防止性、低摩擦性に優れる。
MD1670 二硫化モリブデン 3H 0.20 0.36 約200 比較的硬質で、耐食性にも優れる。
MD1690 二硫化モリブデン
グラファイト
H 0.13 0.22 約200 耐過重性、低摩擦性に優れる。
MD5511 二硫化モリブデン
グラファイト
B 0.19 0.27 約500 耐熱性、耐過重性に優れる。

固体潤滑剤の特性

名称 二硫化モリブデン
(MoS2)
グラファイト(C) PTFE
(通称テフロン)
窒化ホウ素
耐過重性 784MPA 490MPA 196MPA 400~500MPA
耐熱性 350℃ 550℃ 300℃ 800℃
特徴 層状の結晶構造がせん断される事で低摩擦性を発揮する。
特に高過重下の摩擦摩耗低減に優れた効果を発揮する。
層状の結晶構造がせん断される事で低摩擦性を発揮する。
導電性、熱伝導性に富み、高音下での潤滑性に優れる。
低摩擦・非粘着性を有する。
科学的に非常に安定であり、耐薬品性に優れる。
層状の結晶構造がせん断される事で低摩擦性を発揮する。
耐熱性が非常に高く、耐絶縁性熱伝導性に富む。

※二硫化モリブデン
二硫化モリブデンは化学記号MoS2と表記され、1個のモリブデンと2個の硫黄からなる化合物です。層状の結晶構造からなり、それがせん断される事で低い摩擦係数を発揮します。特に高荷重下での摩擦摩耗の低減に硬化を発揮します。耐熱温度は約350℃。

※グラファイト
グラファイトは二硫化モリブデンと同様に層状の結晶構造がせん断される事により低い摩擦係数を示します。二硫化モリブデンと比較して摩擦係数、耐荷重性は劣りますが熱的安定性に優れており、高温下での使用も可能です。耐熱温度は約550℃。熱伝導性、導温性にも優れています。

初期馴染みコーティングのメカニズム

1

摺動部位において摩擦を受けることで、図1のように表面粗さの凹部が被膜で埋まる状態になる。ここで、真実の接触面積※を増すことで面圧低減効果を与える事ができる。

※真実の接触面積
固体は見かけの表面全体で接触するわけではなく、実際の接触は図のように限られた部分のみで起こる。そのような接触部を真実接触点といい、その面積を真実接触面積と呼ぶ。

2

摺動表面の素材が露出した部分には、凹部の残存被膜中の二硫化モリブデン、グラファイトのへき開により移着が始まる。素材の硬度を活かしながら、摩擦面の凝着が発生し易い個所(粗さ凸部)に固体潤滑剤の供給が続くことで、軟質な膜でも大きな負荷において長寿命で耐えうることが可能となる。

3

コーティング被膜が摩滅進行した状態では理想的な摺動面を形成し、凝着及び摩耗の促進を防止する事ができる。

採用例

ヘッドガスケット、ギア類、ドアラッチ、締結ボルト、ステステンレスナット、電磁弁プランジャー、ドアロック、チェーン等